とあるPJの立て直し: 契約について

Reading time: 約3分
Publish date: 2020-01-05
Tags: agile, development, turnaround, project management, contract

 とあるプロジェクトの立て直しの記録に基づいて、プロジェクトマネジメントをテーマにシリーズで書き残したいと思います。今回は契約について触れていきたいと思います。

要旨


契約の状況

 自社プロダクトを内製チームで開発する場合には外部との契約は発生しないかもしれません。本プロジェクトは顧客からの受託開発であり、請負契約でした。しかし、要件定義書がなく完成の定義がないままで、代わりに契約書には「アジャイルで遂行する」と書かれていました。これはとても奇妙な状況で、契約した双方でリスクしかない状況でした。

 アジャイル開発であれば準委任契約で締結することが一般的ですが、当時はまだ成果完成型の準委任契約が施行される2020年4月より前でした。とはいえ、請負でアジャイルをやることは極めて稀です。仮に請負契約とするにしても完成の定義を明確にした上で進め方としてアジャイルを採用することはできます。よほど信頼関係がある相手か、成果物が明確ではあるものの変更に備えた体制か、といったところでしょうか。

 このままでは何を完成させればよいのか、どのような体制とすればよいのか不明瞭なため、契約から見直すこととしました。「アジャイルでやる」とだけ書かれていたため、「アジャイルな体制で立て直しに挑む」という方針がそのまま受け入れられたのは不幸中の幸いでした。このときは、2020年4月より、成果完成型の準委任契約へと切り替えました。


成果完成型の準委任契約

 2020年4月以降であれば、アジャイル開発では成果完成型の準委任契約を採用することが多いでしょう。

成果完成型の準委任契約の主な特徴

といった、アジャイルに適した契約となっています。(裏を返すと、2020年4月までは日本ではアジャイルに適した契約がなかったとも言えます)


信頼関係を構築する

 一般的に、外注する側からは完成責任を持たせられる請負契約が好まれます。逆に受託する側からは完成責任ではなく労働力の提供である準委任契約が好まれます。契約形態の違いはあれど、いずれもリスクを負いたくないという思いがあります。(もっと言うと、完成できなかった場合の責任を持ってくれるか、報酬支払いが確実に行われるか、を双方考えると思います)

 契約とは問題があったときに根拠とする拠り所です。順調に事が運べば、締結し、遂行し、完了する過程で問題になるものではありません。信頼関係があり、発注側には自分たちが積極的に関与して完成に持っていく意思がある、受託側には完成に向けて全力で挑む覚悟がある、そういった関係性があることの方が重要です。信頼関係が構築されていれば、正直なところ契約形態を気にする必要はないのです。契約が不要と言うことではなく、契約は大事ですので不測の事態に備えて適した契約形態を双方で合意して締結することが肝要です。