ベロシティ
ベロシティはスクラムのフレームワークにはありません。アジャイルのプラクティスの一つとして採用されていることが多いです。
要旨
ベロシティとは
ベロシティはチームのパフォーマンスを見立てる方法の一つです。前提として、プロダクトバックログアイテム(PBI)に対して見積もり を行っており、1スプリントで完了できたPBIの見積もりの量を計測します。
ストーリーポイントで見積もっている場合には数値を使います。例えば、1スプリントで完了できたストーリーポイントの合計が12SPであれば、そのチームのベロシティは12SPということになります。この値はこのチームのベロシティであり、他のチームに適用することはできません。メンバー入れ替えが発生した場合には、それは異なるチームですから単純に比較することはできません。近い傾向は示すかもしれませんが、人の入れ替えで「ベロシティが上がった」といった使い方は危険です。
ベロシティの目的
ベロシティを計る目的の一つは、現在の実績値を知り先を見通す計画を立てるためです。例えば、プロダクトバックログに見積もり済みのPBIが120SP積んであったとして、チームのベロシティが12SPであった場合、「少なくとも全体が完成するまでに10スプリントは要する」ということがわかります。ベロシティの役割は、それ以上でもそれ以下でもありません。
ベロシティの安定性
ベロシティは常に一定であれば扱いやすいですが、観測したベロシティが一定で一点に定まることはなく、通常、見積もりの誤差、メンバーの調子、外部からの割り込みなど不確実な要素によりブレます。そのため、最新の値や直近3スプリントの移動平均を使うことがあります。また、計測を始めてすぐに値を使わず、ある程度のブレ幅に収まることを観測してから使うこともあります。
このときに「ベロシティを安定させることに意識を向けないこと」をおすすめします。人は安定させることを意識すると安定させ始めます。これは観測値ではなく、恣意的に調整された目標値になります。このとき観測値が観測値の役割を果たさなくなります1。観測値は指標とせず、そのままにみることが肝要です。
ベロシティの改善
ベロシティの観測を始めると、可視化され上下する値に一喜一憂することがあります。そして、ベロシティが向上することをパフォーマンスの向上として捉え始めると、ベロシティをあげようとする作用が働きます。安定性を求める場合と同じく恣意的に作用します。カイゼンを行った結果、ベロシティが向上したときにのみ、チームのパフォーマンスが上がったといえます。
楽観的ベロシティ
よい見積もりには幅があります。ベロシティによる見積もりも例外ではありません。ベロシティは現在のパフォーマンスを示していますが、それ以上改善しないかもしれませんし、予期せぬ要素により低下することもあります。ベロシティを積み上げて見積もる場合にも、幅を持たせましょう。現在のベロシティを8割程度にした場合とそのままに見積もった場合の両方の間におおよそ確からしいスケジュールが存在する、といった見方をします。
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グッドハートの法則・・観測した値を目標にすると観測値として役に立たなくなる。 ↩︎