プリコネRで考える確率

Reading time: 約5分
Publish date: 2024-01-07
Tags: math, probability, permutation, combination, game

 日本では1月に共通テスト(旧共通一次/センター試験)が実施されます。大学受験の山場の時期です。そこで、少し役に立ちそうな記事を書いてみます。

要旨

いくつかのアプローチを紹介


背景

 プリコネR 1は「ギルドハウス」という家具を自由に配置できるゲームシステムを備えています。なぜかは覚えていませんが、あるとき以下のようなパーティションで区切られた部屋を作りました。

ギルドハウスの例

 しばらく運用していたところ、「8箇所ある割に二人のキャラクターが同じ箇所になることが多い」ことに気づきました。この謎を解明するためには確率を計算するしかありません。

1スペースに二人が入っている例 1スペースに二人が入る例

2スペースに二人が入っている例 2スペースに二人が入る例


問題整理

受験問題に落とし込む前に状況を少し整理しておきます。

従って、問題は以下のようになります。3

リノ、シズル、リリ、クリア、イノリの5人を以下のギルドハウスに無作為に配置する。ギルドハウスには2マスの領域をもつスペースが8箇所ある。1名配置するためには1マスを要する。このとき、少なくとも2名が同じスペースに配置される確率を求めよ。 2マスのスペースが8箇所ある

受験問題文例

 実際に目にする退屈な問題文は以下のようなものでしょうか。

1から8までの番号が書かれた紙がそれぞれ2枚ずつ箱の中に入っている。この箱から5枚の紙を取り出したとき、少なくとも2枚の数字が一致している確率を求めよ。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、白の玉がそれぞれ2個ずつ箱の中に入っている。この箱から5個の玉を取り出したとき、少なくとも2個の色が一致している確率を求めよ。

 試験中にこのような問題を見かけた際にはギルドハウスを思い出してください。


「少なくとも」は余事象で考える

 「少なくとも」は、全体集合から余事象を引くことで目的とする集合を得ることができます。

$$ P(A) = P(U) - P(\bar{A}) $$

 本問題の場合は、

という複数の場合分けがあり、それぞれ考えることが若干面倒です。対して余事象は、

という単一のケースなので、こちらを考えた方が楽そうです。

場合の数で考える

では、解いていきます。

基本的なアプローチ

  1. 全部の通りを求める
  2. (余事象の)場合の数の通りを求める
  3. (余事象の)場合の数の通りを全部の通りで割り、確率を求める
  4. 1から引くことで求めたい確率を得る

■ 全部の通り

$$ _{16}P_{5} $$

■ 全員が異なるスペースにいる

$$ 16*14*12*10*8 $$

■ 場合の数の通りを全部の通りで割る

$$ \frac {16*14*12*10*8} {_{16}P_{5}} = \frac {\cancel{16}*\cancel{14}*\cancel{12}*^{2}\cancel{10}*8} {\cancel{16}*{_3}\cancel{15}*\cancel{14}*13*\cancel{12}} = \frac {16} {39} $$

これは五人全員が異なるスペースにいる余事象の確率です。

■ 1から引くことで知りたい確率を求める

$$ 1 - \frac {16} {39} = \frac {23} {39} = 0.589743 $$

どうやら58.97%は少なくとも二人は同じスペースになるようです。


組み合わせで考える

 本来、確率を考える場合にはすべての場合を区別して数え上げる必要があります。これは、本問題の場合は1スペースにつきそれぞれ2箇所の選択があり、組み合わせとしては同じスペースであっても区別して考える必要があります。しかし、順列と組み合わせが同様に確からしいといった条件を満たす場合に重複する場合を省いた状態で確率を求めることができます。

基本的なアプローチ

  1. 全体の組み合わせの数を求める
  2. (余事象の)組み合わせの数を求める
  3. (余事象の)組み合わせの数を全体の組み合わせの数で割り、確率を求める
  4. 1から引くことで求めたい確率を得る

■ 全体の組み合わせ

$$ _{16}C_{5} $$

■ 全員が異なるスペースにいる

$$ _{8}C_{5}*2^{5} $$

■ 組み合わせの数を全体の組み合わせの数で割る

$$ \frac {_{8}C_{5}*2^{5}} {_{16}C_{5}} = \frac {\cancel{8*2}*\cancel{7*2}*\cancel{3*5}*\cancel{4}*16} {\cancel{16}*\cancel{15}*\cancel{14}*13*_{3}\cancel{12}} = \frac {16} {39} $$

場合の数と同じく、これは余事象で五人全員が異なるスペースにいる確率です。

■ 確率を求める

$$ 1 - \frac {16} {39} = \frac {23} {39} = 0.589743 $$

同じですね。


すべて列挙する

 受験向けではありませんが、確率の問題で現実的に数えられる通りの数であれば、すべてを列挙することも一つの手です。

本問題では、

ですので不向きです。列挙は諦めます。


シミュレーションする

 受験向けではありませんが、大数の法則により、試行回数を稼ぐことでおおよその確率を知ることができます。以下にシミュレーションするためのPythonプログラムを乗せておきます。

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import random

# 1回の試行
def run_trial():
    # 1から8までのスペースがそれぞれ2箇所ずつ
    space = [number for number in range(1, 9) for _ in range(2)]

    # 5人の場所を無作為に選ぶ
    random.shuffle(space)
    chosen_charactors = [space.pop() for _ in range(5)]
    return len(set(chosen_charactors)) < 5  # 重複があるかチェック

# 全体の試行
def experiment(trials):
    # 重複がある試行の回数を数える
    duplicate_count = sum(run_trial() for _ in range(trials))
    return duplicate_count / trials

# 試行回数を設定
trials = 10000
experiment_result = experiment(trials)
experiment_result

 私が実行したときの結果は、「0.5897」でした。


観測する

 今回のケースでは、プログラムを書かずとも、実機で画面を開くたびに観測が可能な状況です。お暇な方は300回ほど試行してみるとおおよその結果が得られるでしょう。

 私が実行したときの結果は、370回の試行では219:151で「0.5919」でした。


まとめ

 「少なくとも二人が同じスペースになる確率は、約58.97%」という結果になりました。誕生日のパラドックスのように(私の)直感に反して意外と確率が高いようです。

 大学受験で解く類いの問題が如何に現実の問題と紐付き、役に立つのかをお伝えしたかった次第です。試験中にギルドハウスのことを思い出して、確率の問題を一人でも多くの人が解けることを願っております。


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  2. パーティションのカーテンが2マスアイテムであり、2マスの中間にキャラクターが来ないとカーテンを開けるアクションが行われない様子 ↩︎

  3. 特にこの5人のキャラクターに思い入れがあるわけではなく、直近仲間入りした5人である。キャル推し。 ↩︎