ネガティブに語られるアジャイルを考えてみる

Reading time: 約4分
Publish date: 2022-12-06
Tags: agile, development, planning, quality, team

 Agile Japan EXPO Advent Calendar 2022 7日目 の記事です。アジャイルではポジティブなマインドで挑むことが多いですが、たまにはネガティブな側面からなぜそのようになったのかを考えることもよいと思います。私が実際に受けてきた事例をベースにつらつらと書いてみます。みなさまの現状の振り返りや、何かのヒントになりますと幸いです。

要旨


アジャイルは計画が立てられない

→ それはアジャイルではなく、無計画に進めていないだろうか?

 実践しているメンバーというよりは、実際にやったことのないステークホルダーや経営層から聞くことが多いです。先入観によるところかと思います。最初の段階では自分たちのペースもパフォーマンスも分からないため、基準となるアンカーがありません。しかし、イテレーションを繰り返すことで徐々につかめてきます。

 一つの方法としては、ベロシティ を観測し計画に活用することがあげられます。ユーザーストーリーマッピングにより全体像を見渡したり、時としてファンクションポイントの計算などの見積もり方法を活用してもよいでしょう。

声を大にして言いたいです。


アジャイルは品質が低い

→ 品質にかかる活動を省略している可能性はないだろうか?

 先に申し上げておきますと、アジャイルだから品質が低下するということはないです。例えば、ウォーターフォールで明確に設けていた「検査工程」を、アジャイルのイテレーションの中で省略している可能性が考えられます。

 よくあるアジャイルで「速くなる」と捉えているケースでは、「速くしなければ」という外圧や意識から、何か動いているらしいものや、何かを省略することで実現しようとしてしまいます。これは確かに品質を下げます。実はアジャイルと言いつつスケジュール駆動しており、期限に追われている場合にも起こるかもしれません。いずれにしても品質に関わる活動をきちんとやることが肝要だと考えられます。ドキュメンテーションも同じように省略されていることがあります。

声を大にして言いたいです。


アジャイルに挑戦したら失敗した

→ 未経験者だけでなんとなく始めていないだろうか?

 スポーツや武道と同じく、ルールや考え方を知ることですぐに始めることができます。誰もそれが間違っているなどと指摘はしません。気軽に誰でも挑戦できるのはよいことです。しかし、本当に身につけたいと考えたとき、みなさんはどうするでしょうか?

 経験者に習ったり、コーチを受けたり、仲間と一緒に練習したりするのではと想像します。では、アジャイルではどうでしょうか?

 アジャイルでは成功確率を高めるためにカイゼンし続けますが、必ず成功させる魔法ではありません。失敗したときには、それをフィードバックさせます。野性的にカイゼンを積み重ねてよくなっていくこともあるかもしれませんが、幸いアジャイルには20年の歴史があり、先人がいます。独力のみで挑戦する場合と先人に習う場合、どちらが成功確率を高めるでしょうか。

すべての先人たちに感謝したいです。


アジャイルにしたら遅くなった

→ 何と比べて遅くなった?

 この相談を受けたときに、とても違和感を受けたので取り上げてみたいと思います。

 チームの見積もりに基づいた積み上げの計画と比べて、ということであれば、チームを見直すよい機会だと思います。スクラムであればスプリントの完了が達成されないため想定通りにいかなかった、ということは起こりえます。これはレトロスペクティブでカイゼンについて話し合い、次のスプリントに活かすことになるでしょう。

 しかし、このときの相談は違いました。プロジェクトの責任者が「メンバーの知らないところで勝手に引いたスケジュール」に対して遅れているということでした。これは遅れではありません。そのスケジュールとチーム、メンバーには関連性がありません。スケジュールに実態を合わせ込むスケジュール駆動になっていることそのものが課題だと考えました。この手の遅れの解決策はマンパワーで乗り切る以外にないと思われます。

声を大にして言いたいです。


ポジティブに行こう

 今回、私が出会ってきたネガティブな意見・相談事から状況を考察してみました。失敗には再現性があり、事例を知ることで回避できることが多いです。何か一つでも得られるものがございましたら幸いです。普段は前向きで建設的な議論を進められるとよいですね!